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第2回 解説
『コミックスドロウイング』(誠文堂新光社)3号掲載

連載は3ページ+裏話1ページの計4ページで構成されています。
フルサイズのビジュアルと、裏話については掲載紙をご覧ください。
サイト上では、紙面に載りきらなかった細かな部分を掲載していきます。

解説テキストはすべて伊豆平成。
ビジュアルは『コミックスドロウイング』誌表紙を除いてすべてりりんら。

コミックス・ドロウイング3号



その1:ザベンジ

 軽い気持ちでお願いしてしまったシーンだったが、実はこの絵が一番りりんらさんに苦労をかけたのではないかと思う。
 ザベンジのイメージを伝えるのが、なかなか難しかったし、アングルなども紆余曲折があった。
 船内に人の気配があるものの、はっきりとは見えない――という状態も大変だったと思う。





その2:婚礼の儀

 青が基調なのは、花婿がヴォジクの出身であることと関係がある。国を表す色が、ハンムーは黄色、ヴォジクは青なので、ハンムーの王都で、しかも王宮に面したとおりでこの婚礼を執り行うところに、チャクジャグの傍若無人ぶりが伺える。彼は、ヴォジク建国の士(というより、それを資金面で支えているパトロン的な人物。紀伊国屋文左衛門? 坂本龍馬?)なので、そのくらいの向こうっ気の強さがあっていいと思う。



その3:レカの底なしの胃袋

 ここは物が多いので、色々と細かい部分で変更をお願いした記憶がある。例えば、ガラスの器だ。
 イラストを見たときに、まずカナンにガラス製品があるかどうかで悩んだ。陶器がメインだろう。庶民は素焼きの器か、木の器、日常的には大きな葉っぱなんかも使いそうだ。
 でも、ガラスもあっていいだろう……ただし、最初の器は工業製品のようなコップだったので、「もっと厚手ででこぼこしたもので」と注文をつけた。



こぼれ話
その1:底なしのレカ
 今回は「二口女」が隠れテーマだった(べつに隠れてないか)。
 昨今はテレビでも大食い女性タレントが活躍しているが、ああいう女の人は昔からいたのだろう。普段は我慢しているが、祭りとか家の者が留守とかいった何かの拍子に桁外れの大食いだってことがばれて、あまりのすごさに妖怪呼ばわりされてしまったのが二口女なのではないか? などと思ったのが、きっかけになっている。
 三枚目のレカに関しては「腹が膨らんでも美しい」なんてことをりりんらさんにお願いしたと思う。おかげで、艶やかなお腹の膨らみがなんとも色っぽい感じになっていて感動した。
 蛇の入れ墨の話は、できあがった絵を見て思いついた設定である。あとになって、「レカは蛇をイメージしていました」という話をしたら、彼女も同じコトを考えていたようだ。大食いの人って噛まずに丸呑みしているイメージあるよね。うん。

その2:カナンの食べ物
 私は食べることも美味いものも料理するのも好きなので、カナンの食文化はなるべく多種多様であって欲しいと思っている。
 だから、「小麦と獣肉」を食べる国もあれば(高地のクンカァンなんかは、この雰囲気だ)、「米と魚」の国があってもいいのだ。もちろん、「小麦と魚」の国だってあっていい。
 ハンムーの場合は、カナンでも温暖で水の豊富な低地が多い土地柄なので、主食は米ということにした。魚貝は、ゴヌドイル河の文化なので淡水のものを好む。海水魚は、ザベンジなどで運ばれてくる干物がメインだろう。肉は鶏肉が主で、獣肉は豚。牛はあまり食べない……という感じ。米はそのまま食べもするが、米粉で麺を作ったり、皮にして具を包んだりもする。
 調味料は魚醤がメインだろう。
 りりんらさんにも「基本的にはベトナムなんかの東南アジアな雰囲気です」と伝えたと思う。
 それから、ご飯が主食の食事だと、他の料理も、ご飯と共に口中調味して食べることを前提にしたものになるはずだ。
 とか言いつつ、こちらから具体的に挙げた料理は、蛙ぐらいなんだけれども。

その3:ブラジャー
 レカは最初、上半身は地味なものだったのだが、色々と飾りをつけることになった。
 とはいえ、舞台裏の上半分にあるたくさんのブラジャーの候補は、実は後付だったりする。りりんらさん、遊びすぎです。



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